11月15日、父が集大成となる第二作品集「自在の竹 保坂紀夫の造形」(日貿出版社)を出版しました。13年前に亡くなった祖父の「保坂耕人全歌集」(2015年・短歌)に続き、2世代で2年連続の出版となります。
1冊目「変幻の竹」は1999年の出版でした。父の年齢からも本を出すのはこれで最後であろう、ということで、作品の写真以外にも、学生時代からの年譜や作品を生み出していった経緯、評論なども掲載されています。
竹という素材はマニュアルがある細工物・クラフト・工芸だけでした。それを美術に昇華させたのは、誰も挑まなかった未知の世界で、誰も創っていない作品ですから、どういうヒゴを何本作り、どう編めば形状を維持できるのか誰も教えてくれないので、試行錯誤の連続です。
この作品集を見ますと、息子ながら「人間国宝級の偉業をやってきた」と思います。
職人・デザイナー・美術家の3役を一人で行い、オリジナルの編み方まで考案しました。「蝶が舞うランプ」は奇跡的ですし、作品の多様性もすべて一人で創ったとは信じられないほどですが、まだ創りたい作品は沢山あるようです。後にも先にも父のような「竹の美術家」は現れません。未開の地を世界初・史上初めて、ただ一人切り開いたからです。
しかし、だからこそ何の保障もなく、父の生活と経済を支えたのは母でした。母なくして父の偉業は有り得ず、「妻の支える力」の重要性を改めて感じているところです。
そういう意味では、母に捧げる本だと思います。
その支えがなくなってしまったこともあり、父の内弟子を募集しています。5年10年と続ける意志のある方、日本の宝・傳統を繋ぎ守っていきたい方がいらっしゃれば、ご連絡ください。