私は、今までに日本全国をまわり、色々な職人さんのお話を伺ってきました。ある職人さんのお話をご紹介します。
「私がフランスに行ったら、レッドカーペットで迎えてくれたけど、日本ではただのおじさん」と仰っていました。この方の伝統工芸は後継者がいないため、消滅の危機にあります。
要するに、海外では、手間ひまをかけた手造り品や職人に対する評価が高いのに、自国の日本では評価されていない、ということです。普通は逆ですよね。自国では評価されているけど、海外では知られていないから評価が低い、というように。
品物に対して「高い」と言う人がいるのは、制作工程や修業の大変さを知らないということだけではなく、そもそも手造り品・工芸品の価値を低くみている、職人さんに対する敬意がない、ということもあるのではないでしょうか。尊敬する人が創っているモノに対して、「高い」とか「安くしろ」とは言わないでしょうから。
英国では、手造り手描きのマグカップなどは、3000~5000円位の有田焼よりもずっと高いそうで、英国に長く住んでいた方が「むこうでは手造り手描きのものはこんな値段では買えないから有田焼は安い」と仰っていました。型で成形して絵を転写したような大量生産品と、手造りのモノの価値は全然違う、ということが浸透しているのでしょう。